8月14日、気候変動活動家グレタ・トゥーンベリは、イングランド・プリマスからニューヨークに向けて、全長約18メートルのヨット「マリツィアII号」で出発した。

今年の夏は記録的な暑さとなった。6月は今までの中で最も暑い6月であり、7月は今までの中で最も暑い7月となった。フランス、ドイツ、イギリス、ベルギー、そしてオランダでは最も暑い日々を記録。キューバやベトナム、そしてトーゴからレユニオン島もその例外ではない。

 

この記録的な猛暑は2つの理由で危険である。

1つは、暑さが地球を壊しつつあるということ。

そしてもう1つが、人々が希望を失ったり、無関心となってしまうほど、暑さが日常となりつつあることだ。日々報道されるニュースはこの暑さと同じくらい、私たちから希望を奪っている。しかし、この無関心が起こるのはタイミングが悪いときだけだ。先月、ポルトガルでの電力取引市場で料金が最安値を更新したとき、再生可能エネルギーは最も低い値段を記録した。政治的な意志さえあれば、私たちは直ちに気候変動に打ち克つための大きな一歩をつくりだすことができるのだ。

だからこそ、私たちは世界中にいるFridays for Future をはじめとする若き活動家たちに感謝を伝えたい。彼らはこの変わりばえしない日常を受け入れず、そしてあきらめずにいる。彼らの中で有名なグレタ・トゥーンベリは、国連気候変動サミットが開催されるニューヨークへヨットで渡っている。だが、彼女は一人で活動しているわけではない。Fridays for Future による活動のおかげで、今やペルーからペンサコーラ、プラハやウラン・バートル、そして国連本部の目の前にも、グレタのような若き活動家がいるのだ。

2018年8月、グレタは“気候変動問題に対する学校ストライキ”を始めた。彼女は大人たちが若者たちに対して将来の為に義務教育を命じる権利は、同じ若者たちの将来を守ろうとしない時点で、その義務教育を命じる権利を放棄しているのと同じであると論じた。その結果、世界中の若者たちはグレタの主張に同意し、彼女の活動は世界中に広まり、今では140万人もの学生が活動をしている。

 

 

活動開始から1年後、グレタや若き活動家たちは新しい試みを始めている。彼らは大人に対し、若者たちの活動に関わるよう呼びかけている。

今年9月20日(一部の国では9月27日)、史上初となる全世代が参加できる気候ストライキが起きる。ある人は勤務時間中にストライキを実施し、ある人は木を植えにいき、そして抗議活動に参加する。

世界の地理が複雑であるように、気候変動に対するストライキに参加する目的も多様化している。ほかの地域では、石油パイプラインの建設を阻止することを目的に座り込みを実施したり、石油・石炭業界から投資や融資を引き揚げるように訴えたり、国連加盟国に炭素税の導入や、より徹底的な二酸化炭素の排出量を制限するように働きかけたり、またニューグリーンディール政策を導入するよう働きかけている。

アスリートや料理人に俳優から政治家、そして事業家や労働組合まで、様々な人たちがこの活動に賛同している。今回の気候マーチは、気候危機解決を求めるストライキとして史上最大になるだろう。

 

 

たった一回の気候マーチで気候危機を解決できるだろうか?

私は解決できるとは思っていない。私たち大人も、若者たちのように積極的、且つ持続的に活動する必要がある。その上で今回の気候マーチは、象徴的で重要な2つの意味を持っている。

1つ目は、気候危機を解決するため、変わりづらいこの”日常の習慣”を変える必要がある。我々は人類の存在を脅かす脅威が明らかに迫っているのにも関わらず、昨日と変わらないルーティン化された日々を送っている。状況は日増しに悪化しているが、私たちの周りには緊急性を促す警告は現れない。だからこそ、私たち大人もストライキに参加することで、社会的変革を引き起こす必要がある。

2つ目は、私たち大人は“大人”らしく振る舞う必要がある。私たちは、若者たちにだけ、この史上最悪の問題の対処を押し付けていてよいのだろうか?言うなれば、気候危機は不正義そのものを象徴している。例えば、気候危機による影響を受ける人たちは、二酸化炭素の排出量が少ないことが挙げられる。そして気候危機により悪化する環境の元で生活するのは、若者や、これから生まれてくる赤ちゃんたちなのだ。 私たちは、気候危機によって地球が見る影もなくなっているころには死んでいるだろう。だからこそ、このマーチとは、未来ある若者や、次世代を生きる全ての生き物に対しての愛情と、彼らを心から思いやる気持ちを伝える、重要な機会なのだ。

 

気候危機の問題を今からでも解決できるという保障はどこにもない。絶望することもできるが、この現実から目を背けることは許されない。最も絶望的な時こそ、人々の連帯が必要だ。子どもが助けを求めている。手を差し伸べられるのはあなただ。

ビル・マッキベン(Bill McKibben

国際気候変動キャンペーン350.orgの創設者。ミドルベリー大学・環境学部員。

 

この記事はボストン・グローブ新聞に掲載された原文を翻訳したものです。

 

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